空き家問題

  • 2021年02月12日
  • 最終更新日: 2021年03月06日

高齢化社会問題

空き家の中で最も問題視されているのが売却活動や、賃貸募集をしておらず、定期的な利用がまったくされていない放置状態の空き家です。

空き家が発生する最も一般的な原因は、自宅を所有する高齢者が老人ホームなどの高齢者施設や子供宅に転居することです。今後、団塊の世代を含めた高齢者は急激に増えるため、空き家はどんどん増えます。

管理や活用の問題を抱える空き家所有者

2015年5月に空家等対策特別措置法が施行されてから、「空き家問題」という言葉を耳にする機会が増えました。実際、空き家問題は所有者側の視点ではなく、近隣住民側の視点で語られることがほとんどです。その結果、「空き家は地域の景観や安全を損なうものである」という負のイメージがついてしまいました。

しかし、空き家を巡る問題のほとんどは、所有者が加害者で近隣住民は被害者という単純なものではありません。所有者自身も、空き家の管理や活用について問題を抱えていることが多いのです。そして、所有者が抱える問題の多くは、法律や税制、もしくは物理的な問題であることが多いため、簡単に解決することができないのです。

所有者が抱える問題

空き家の多くは高齢者が住んでいた自宅もしくは親から子供たちが相続した実家です。そのため、空き家には家族との想い出が詰まっており、売却することに抵抗があるという方が多くいらっしゃいます。

親が自宅を所有している場合

高齢になる親が老人ホームなどの高齢者施設や子供宅などに転居して自宅が空き家になった場合、自宅を売却するにはいくつもの壁があります。片づけを始めても昔のことを思い出してなかなか整理が進まなかったり、最期は家に戻りたいと思っていたり、認知症を患い売却の判断ができなくなってしまっていたりといったものです。たとえ、子供たちから管理が大変だという理由で売却をすすめても、同意してくれる親は多くありません。このようなことから高齢者の自宅は長い間、空き家状態になってしまっているのです。

子供が実家を相続している場合

実家の売却に躊躇するのは親だけではありません。子供たちが相続した後も実家の売却は簡単ではないです。子供たちは実家から離れた場所に住んでいることが多く、売却についてどこに相談すれば良いのか分からなかったり、売却について兄弟間で争いになってしまうケースも多々あります。兄弟の一人が売却することを主張し、他の兄弟が売却に強く反対するといった具合です。双方とも親の気持ちを代弁しますが、どちらの主張が正しいとも言えず、妥協することも難しいのが現状です。

空き家である間は適正管理が必要

このように、自宅や実家が空き家になってしまう理由は十人十色。さらに、売却ができるようになるまで数年かかることもあります。その間、誰も利用していない住宅は一気に傷んでしまいます。老朽化が進むと屋根や外壁などの建材が剥がれ落ちたり、建物が傾いて倒壊する危険性が高まったりとさまざまな問題を引き起こしてしまいます。

また、庭の管理が不十分な場合、生い茂った庭木や雑草が景観を乱すだけでなく、蚊やスズメバチや害獣(ネズミやハクビシン等)を発生させてしまうこともあります。

空き家の管理が行き届いておらず、周辺環境に悪影響を及ぼしてしまっている場合、いざ売却する際に隣地の方から測量の立会いを拒否される原因にもなり、売却ができないことにもつながります。

信頼のおける不動産業者に相談し、売却・賃貸・管理等の提案を受け納得したうえで空き家問題に対応することをおすすめします。

このコラムの執筆者

株式会社キューブ代表(宅地建物取引主任士・建築士)

杉山旬哉

実家が建設会社であったため、不動産業に興味があり大学在学中に「宅地建物取引主任者(現在の宅地建物取引主任士)」を取得する。
大学卒業後、新卒で埼玉県の不動産業者に約10年勤務。お客様が求める物件よりも会社の利益を優先するような不動産業界の旧態依然とした考え方ではいつか立ちいかなくなるだろうと思い、仕事に迷いが生じはじめる。
お客様に心から喜んでいただける物件を紹介するには、物件の調査・書類作成・税務相談・間取プランの作成等の知識が必要であると痛感し「建築士」を取得する。
お客様に豊かな生活と喜びを与えるためには営業力だけでなく物件の調査や書類作成能力が必要だと強く感じるようになり、銀行系不動産業者の三菱信不動産販売株式会社(現在の三菱UFJ不動産販売株式会社)へ転職し約10年勤務。成績優秀者として数多く表彰されるが、大手故の融通が利かない部分や、仕事に直結しない業務の多さに限界を感じ、自身で会社を設立することを決意する。
2016年4月株式会社キューブ、代表取締役に就任。日本の不動産の枠にとどまらず海外不動産の動向やコミュニケーションを学ぶため、カナダのバンクーバーへ留学。日本と海外不動産の売却方法の違いや中古住宅に対する価値観の違いについて深く学ぶ。
2018年に帰国後、リフォーム・リノベーションした中古不動産物件を中心に販売する。
現在は、地主のお客様からの不動産相談や、弁護士・税理士・司法書士等の士族の方からの紹介案件、また、一度お取引したお客様からのご紹介を中心に不動産事業を展開。