新築ワンルームマンションに投資してはいけない5つの理由
- 2021年07月19日
目次
不動産業者から「ワンルームに投資してみませんか?」といった売り込みの電話はありませんか?
ほとんどの売り込みは「新築のワンルームマンション」への投資です。そして、以下のようなセールストークで売り込んできます。
- 節税になる
- 生命保険代わりや、年金の足しになる
- 長期の家賃保証で安心
しかし、業者のセールストークは実際のところ、投資家にとって非常に不利な内容であり、結局は投資に失敗してしまうことがほとんどです。ですから新築ワンルームマンションへの投資は手を出すべきではありません。
ところが、業者は言葉巧みに売り込んできます。そこで、セールストークに負けないようにするためにも、新築ワンルームマンションが失敗する具体的な理由をきちんと理解することが大切です。
なぜ新築ワンルーム投資に手を出してはいけないか?
まず結論から申しますと、ほとどの新築ワンルームマンション投資は「業者が儲かる」だけで、投資家には不利な内容になっています。その具体的な内容は後述しますが、まず新築ワンルームマンション投資の実態を簡単にお伝えしたいと思います。
実は「成功事例がない」というのが、新築ワンルーム投資における現実です。私も様々な投資家にお会いしてきましたが、新築ワンルーム投資で成功している方に出会ったことがありません。
一方、業者のセールストークを信じて投資したものの、「大損した!」という話はとてもよく聞きます。訴訟問題に発展しているケースもあります。
このように、新築ワンルームマンションへの投資は「良い話」をまず聞かないため、私も様々な場所で「手を出さないように」とお話ししなければなりません。
では新築ワンルームマンション投資は、なぜ投資家に不利なのでしょうか? その具体的な理由についてお伝えしたいと思います。
新築ワンルーム投資で業者の言う「メリット」は、実は「デメリット」!
新築ワンルームへの投資を勧めてくる業者は、様々なメリットを強調してきます。そうしたメリットは「真っ赤なウソ」ではないものの、実際にはほとんどメリットがありません。むしろ、「デメリット」と言ってもよいでしょう。 ここではまず、業者がよく強調する「節税効果」や、「生命保険の代わりになる」、「年金の足しになる」という話が本当になのかについてお伝えしたいと思います。
節税効果は本当にあるのか?
業者の言う「節税効果」は、主に2種類あります。それは、「減価償却による節税効果」と、「所得税・住民税の節税効果」です。それぞれを以下に解説いたします。
減価償却による節税効果は少ない
減価償却による節税効果は確かにあります。しかし、金額的にはそれほど大きくありません。なぜなら建物の価格は高いものの、例えばRCですと耐用年数(償却期間)は47年に及ぶからです。よって、節税できる額は年間で数十万円程度と、大きなインパクトはありません。
むしろ、数十万円の節税のためにローンを組んで高いワンルームマンションを購入するのは、とてもリスクの高い投資ではないでしょうか?
所得税や住民税の節税効果について
所得税や住民税の節税効果についてはどうでしょうか?
まず、所得税・住民税は、所得(儲け)に対して、所定の税率が課税されます。よって、所得税・住民税が減るということは、所得が減っているということです。言い換えれば、投資して所得税・住民税が減るのは「赤字を出しているから」ということです。
1億円くらいの所得がある方でしたら、赤字を出すことで大きな節税となり、手元に残るキャッシュがプラスになることもあります。しかし、サラリーマンの方がワンルームに投資し赤字になるというとは、「会社からもらった給料を食いつぶしている」ことに他なりません。
本来、投資は所得を増やすことが目的です。ですから、節税のために赤字を出して給料を食いつぶすのは「本末転倒」ではないでしょうか?
生命保険の代わりや、年金の足しになるか?
新築ワンルームマンションへの投資は、「生命保険の代わりになります」、「老後の年金の足しになりますよ」と売り込む業者もいます。でも、果たして本当なのでしょうか?
生命保険の代わりや、年金の足しにするためには、「ワンルームマンションからの収益がプラスになること」が必須条件となります。具体的には、税金や諸経費を払っても家賃収入(キャッシュフロー)がプラスになる、あるいは物件の売却益がプラスになることです。
しかし、実際はどうなのでしょうか?
具体的な数字は後述しますが、業者は「これだけキャッシュフローがプラスになります!」と言うものの、実際には税金を払うとマイナスになることが少なくありません。
また、新築ワンルームはそもそも「割高」で販売されているため、買った時点で既に大きな含み損を抱えています。ですから、売却益も望めません。
加えて、冒頭でお伝えしたように、新築ワンルーム投資のほとんどは業者が儲かるだけで、実際に成功している投資家はいません。ごくごく少数ながら良識のある業者もいるかも知れませんが、大損する確率がかなり高い投資と言えるでしょう。
このように新築ワンルームマンションへの投資は儲からないので、「生命保険代わり」、「年金の足し」にはならないばかりか、むしろ足かせとなる危険があります。
訴訟問題にも発展!新築ワンルームが儲からない具体例
ここでは、新築ワンルームマンション投資が儲からない3つの具体例をお伝えしたいと思います。
新築ワンルームマンションはそもそも割高!
新築ワンルームマンションは、土地の仕入れ、開発、マンション建設、営業・販売を全て業者が一括して行います。そのため、各工程の中間マージンや、営業費用がかなり上乗せされています。 例えば、都内で3000万~4000万円で販売されている新築区分ワンルームも、実際の評価額は2000万~3000万円となります。
このように新築ワンルームは、買った時点で1000万円程度の含み損を抱えるため、非常にリスクの高い投資となります。
「これだけのキャッシュフローが出ます」にはご用心!
例えば、新築区分ワンルームのよくある売り文句として、以下のようなものがあります。
- 「月々9万円の家賃収入で、ローン返済が8.5万円です。金利1%の35年ローンが組めるので、毎月5000円の不労所得が手に入ります。そして、ローン返済後は賃料が全て不労所得になります。」
上記は一見すると、幾らかプラスになるように思えますが、実は税金を払うとマイナスになってしまう内容なのです。
仮にローン返済8.5万円のうち、元本が5万円とします。ローンで経費と認められるのは金利だけですので、返済額8.5万円から元本5万円を差し引いた、金利分3.5万円が経費となります。 つまり、家賃9万円から金利(経費)3.5万円を差し引いた、5.5万円が「儲け」として課税対象になります。仮に税率30%としますと、納税額は1.65万円となります。
結果、「家賃9万円 - 返済8.5万円 - 納税額1.65万円 」を計算しますと、11500円の赤字
となってしまいます。
このように、業者の「これだけキャッシュフローが出ます!」という話は鵜呑みにできません。実際に投資する場合は、税引き後に幾ら残るかを考慮する必要があります。
家賃保証はあてにできない
新築ワンルームを勧める業者は、「35年家賃保証があるから大丈夫です」というセールストークもしてきます。つまり空室が出ても、35年は業者が家賃分を保証すると言うのですが、本当にそうなのでしょうか?
理屈で考えた場合、まず業者が35年も事業を続けられるかどうかは分かりません。また、35年もまじめに家賃を保証していたら、どう頑張っても儲からないはずです。
実際、大半の業者は空室が続くなど、都合が悪くなると色々と理由をつけて保証賃料の値下げを要求してきます。また、値下げに応じないと否応なしに契約が解除され、家賃が支払われなくなります。こうしたこともあり、「話が違うじゃないか!」と投資家が訴訟を起こす事例も増えています。 いずれにしても、家賃保証は全くあてにならないというのが現実です。
このように、新築ワンルームマンションは「とことん儲からない」投資先なので避けるべきなのです。
「本当に儲かる物件」へ投資しよう!
そもそも「投資」とは、「幾らかのリスクを取りつつも、投じたお金よりも大きなリターンを得ること」が目的です。つまり「儲かるかどうか?」で判断していくべきです。
見方を変えれば、儲かるのであれば新築ワンルームマンションにこだわる必要はありません。そこで、ここでは新築ワンルームに代わる、高い収益を見込める別の投資先を提案したいと思います。もちろん、あなたが負えるリスクや属性(組めるローンの規模)などを考慮しつつ、あなたに合った投資先を見つけましょう。
昨今、家賃収入を得るための「収益物件」を購入する方が増えています。しかし一方で、計算上はキャッシュフローが出るはずなのに、実際には税金や修繕などで赤字になる、空室がなかなか埋まらずに収益化できない。「こんなハズじゃなかった・・・」と頭をかかえる方が多いのが現状です。
新築ワンルーム以外の区分所有
区分所有の候補となるのは、新築以外のワンルームマンション、ファミリータイプ、店舗、事務所などがあります。儲けの額は小さいもの、安い金額で始められるメリットがあります。 例えば、関東地方の田舎などには100万~200万円台の物件もあります。手持ち資金で始められる額ですから、借入に抵抗がある方や、とりあえず投資を始めてみたい方にお勧めです。
戸建て
土地から買う新築分譲、中古の戸建て、メゾネットなど様々あります。ただし土地も購入するため、区分所有よりも割高でありながら、家賃はあまり高くできないというデメリットがあります。 そこで、土地探しから自分で企画して、安い工務店で建てるなどの工夫が必要です。
あるいはリスクを幾らかとって、築古のボロ戸建てを再生させる方法もあります。時折、100万~300万円くらいのボロ物件や、かなりボロボロな物件なら数十万から買えることがありますので、こうした物件を再生させるのも一つの手法です。
一棟アパート
アパートは家賃収入が多い傾向があるものの、投資対象として人気のため競争が厳しくなっています。 そこで、地方・田舎の中古一棟アパートへの投資や、自分で企画し土地から探す新築アパートという方法もあります。いずれも手間やリスクをとる事で、収益性を高めることができます。
中古一棟マンション
中古一棟マンションのメリットは、メガバンクや大手地銀などからも低金利で融資を引きやすく、規模が大きいので拡大スピードを上げられることです。 一方でマンション投資は、その時にとれる戦略が変わりやすいというデメリットがあります。特に、書籍等に書いてある戦略は既に古くなっている場合がありますので、常に情報のアンテナを張り、自分に再現性のある投資法を模索する必要があります。
まとめ
1. 新築ワンルームマンションへの投資は、業者だけが儲かる内容であることがほとんどです。また、成功事例がほぼ無く訴訟問題も起きている、というのが新築ワンルーム投資の実態です。
2. 業者が強調する投資のメリットは、実はデメリットとなっています。減価償却による節税効果ゼロではありませんが、リスクに対する効果が少なすぎます。また、所得税や住民税が節税できるのは、投資で赤字になるからです。加えて、そもそも新築ワンルームは儲からないため、生命保険の代わりや、年金の足しにもなりません。
3. 新築ワンルームマンションへの投資が儲からない具体的な理由は3つです。まず、割高で販売されているため、買った瞬間に1000万円程度の含み損を抱えることです。また、表面上はキャッシュフローがプラスになっても、税金を払うとマイナスになることがしばしばです。加えて家賃保証も、数年後には保証賃料が値下げされる、一方的に契約解除され払われなくなるなどで、訴訟問題にも発展しています。
4. そこで投資をするなら、新築ワンルームマンション以外の「本当に儲かる物件」に目を向けましょう。投資家各自の取れるリスクや、組めるローンの規模にもよりますが、新築ワンルーム以外の区分所有、戸建て、一棟アパ―ト、中古の一棟マンションへの投資が代替案としてお勧めです。
ぜひ今回の記事を元に、仮にあなたや、あなたの周りの人が業者に売り込まれたとしても、セールストークを冷静に判断してください。 不動産投資は、業者がセールストークで言うような甘い世界ではりません。しかし、しっかりと勉強をして必要な知識を身に着ければ、成功の確率を高めることができる投資法でもあります。
このコラムの執筆者
株式会社キューブ代表(宅地建物取引主任士・建築士)
杉山旬哉
実家が建設会社であったため、不動産業に興味があり大学在学中に「宅地建物取引主任者(現在の宅地建物取引主任士)」を取得する。
大学卒業後、新卒で埼玉県の不動産業者に約10年勤務。お客様が求める物件よりも会社の利益を優先するような不動産業界の旧態依然とした考え方ではいつか立ちいかなくなるだろうと思い、仕事に迷いが生じはじめる。
お客様に心から喜んでいただける物件を紹介するには、物件の調査・書類作成・税務相談・間取プランの作成等の知識が必要であると痛感し「建築士」を取得する。
お客様に豊かな生活と喜びを与えるためには営業力だけでなく物件の調査や書類作成能力が必要だと強く感じるようになり、銀行系不動産業者の三菱信不動産販売株式会社(現在の三菱UFJ不動産販売株式会社)へ転職し約10年勤務。成績優秀者として数多く表彰されるが、大手故の融通が利かない部分や、仕事に直結しない業務の多さに限界を感じ、自身で会社を設立することを決意する。
2016年4月株式会社キューブ、代表取締役に就任。日本の不動産の枠にとどまらず海外不動産の動向やコミュニケーションを学ぶため、カナダのバンクーバーへ留学。日本と海外不動産の売却方法の違いや中古住宅に対する価値観の違いについて深く学ぶ。
2018年に帰国後、リフォーム・リノベーションした中古不動産物件を中心に販売する。
現在は、地主のお客様からの不動産相談や、弁護士・税理士・司法書士等の士族の方からの紹介案件、また、一度お取引したお客様からのご紹介を中心に不動産事業を展開。