売却するのに測量は必要?

土地売却時における「測量」は、具体的にどのようなケースで利用されるのでしょうか。

測量」を行う目的

測量は、「面積」の確定と「境界」の確定という2つの目的で行われます。

「面積」は法務局で取得できる登記簿謄本を見れば確認することが可能で、売主と買主が了承すれば登記簿の面積で売買契約を締結することもできます。しかし、これは実測されたものでないものもあり、多少の誤差がある場合もあります。事実、一昔前は登記簿謄本の面積での売買契約がよく行われていましたが、昨今ではほとんどの購入検討者が「測量」を求めます。

「境界」が確定していない場合も同様です。このままで売買契約を締結することは可能ですが、後に境界トラブルに発展して面積が小さくなってしまっても文句は言えません。「境界」確定のための測量が済んだら、境界杭や境界標と呼ばれる目印を境界部分に設置し、測量図が作成されます。

測量後は境界確認書を作成すること

「境界」確定が済んだら、境界杭や境界標を設置します。しかし、これだけでは工事などで境界標が倒れたり、抜けたりする場合があります。そのため、境界がどこなのかを書面に残しておかなければなりません。その書面が境界確認書です。

境界確認書を一度作成しておけば、売買により隣地の所有者が替わった場合でも境界トラブルを避けることができます。これを作成するには、現地に測量者と土地の所有者が集まる必要があります。

「測量」が必要な5つのケース

では、具体的にどのような土地の場合に測量をしなければいけないのでしょうか。以下では、測量画必要なケースを5つご紹介いたします。

1.境界の目安(堀やフェンス)がない土地の場合

境界確定をしていなくても、目安となる堀やフェンスなどがあればそれを境界と見立てることがありますが、それらがない場合、どこまでが自分の土地か分からないため測量して境界確定する必要があります。

2.境界杭がない土地の場合

境界杭がない土地の場合には測量をしなければどこまでが自分の土地か分かりません。一目見て境界杭が見当たらない場合でも、上に土がかぶさって見えなくなっていることもあるため、心当たりがあれば掘ってみると良いでしょう。

3.高額な地価の土地の場合

地価が高額な土地の場合には、1㎡違うだけで数百万円金額が変わってしまいます。こうした土地では事前に測量を行い、面積を確定しておきましょう。

4.面積が登記簿記録と大きく相違する土地の場合

測量されていない土地の場合、登記簿の面積で契約することになりますが、その登記簿の面積と実際の面積が大きく相違する土地の場合は事前に測量することをおすすめします。

5.相続税を物納で納める場合

相続税は時に大きな金額になることがあり、金銭で一括払いできない場合には延納が認められます。それでも支払えない場合には不動産を物納することが可能です。ただし、物納するには「境界が明確でない土地」または「隣地の所有者から境界に関する了承が得られない土地」でない必要があります。

そのため、物納にあてる前に測量して境界を確定しておかなければなりません。

一方、以下のようなケースの場合には測量が省略されることもあります。

都市部以外の広大な土地の場合

都市部以外の広大な土地の場合、面積が大きいと測量費用が高額となってしまうため登記簿面積での取引ですることが少なくありません。

地価が低い郊外地の土地の場合

また、郊外で地価が低い土地であれば、境界のことで紛争に発展しにくいため、こちらも測量を行わず公簿面積とすることがあります。

測量図について

土地売却の際に使用する測量図には3種類あります。

1.確定測量図

確定測量図は隣地や、接道する道路の所有者との立ち合いが済み、境界確定されたものです。隣地や隣接道路が官有地(国や市町村の土地)であれば官民査定(官と民で立ち会って境界を決める)を、一般個人や法人が所有者であれば民民査定を経ている必要があります。売買契約の際には基本的にこの確定測量図を用います。確定測量図は基本的に所有者本人しか持っていません。

2.地積測量図

地積測量図は法務局にある図面で、通常、土地家屋調査士や測量士によって作成された確定測量図が法務局の仕様で登録されています。ただし、地積測量図は必ずしも確定測量図ではなく、作成日が古いものは土地境界線について所有者の立ち会い等がおこなわれていないものも含まれています。地積測量図が法務局に登録されていれば、売買契約時に確定測量図の代わりとすることができます。図面通りに境界標があるのかを現地で確認するようにしましょう。

3.現況測量図

現況測量図はその名の通り現況を測った測量図で、仮測量図とも呼びます。境界確定のための立ち合いなどされておらず、単にその土地を測量した図面です。

「測量」にかかる費用と期間

測量にはどのくらいの費用と期間を見ておくと良いのでしょうか。

測量金額の相場

土地売却の際に行う測量の相場は、土地の広さと、隣地や接道が官有地の場合に行う官民査定があるかどうかで異なります。おおよそ、100〜200㎡程度の土地で官民立ち合いの必要な測量費用が60〜80万円ほど、官民立ち合いの不要な測量が35〜45万円です。ただし、同じ広さでも地形が複雑な場合や隣地の権利に関わる人が大勢いる場合には測量費用も高額になりますのであくあまで目安としてください。

官民査定必要官民査定不要
測量費用60〜80万円35〜45万円

測量費用が高額になりやすい土地

測量費用は、以下のようなケースでは高額になりやすいです。

隣地に関して紛争が発生している場合

隣地が裁判所などが介在する係争中の土地や、複雑な相続が絡んだ土地の場合には高額になります。また、係争中の土地の場合は弁護士など専門家に依頼して話を進める必要な場合があります。相続が絡んだ土地では、相続登記のなされないまま数十年が経過し、関係人が多かったり、消息がつかめなかったりして裁判所を活用しなければなりません。これらが高額になるケースです。

土地の形が複雑な場合

土地の面積が広ければそれだけ手間がかかるため費用も高くなりますが、小さくても土地の形が複雑であれば高額になることがあります。土地の途中に大きな段差があるなど測量に手間がかかるケースや、手入れされていない木々が生い茂った土地、設置しなければならない境界標の数が多い場合がこれにあたります。

隣地の権利に関わる人が大勢いる場合

隣地の権利に関わる人が多くいる場合、立ち合いの調整をするだけでも手間がかかりますし、共有持分のある不動産だと共有者全員の承諾が必要なため高額になります。また、過去に境界についてトラブルが起こっていたり、隣地の所有者が立ち合いを拒否したりするケースで高額になることがあります。

「測量」にかかる期間

測量にかかる期間ですが、通常、依頼から境界確定までは隣地の所有者との立ち合いも必要なことから3〜4ヶ月かかります。隣地の所有者の中に協議に参加するのが難しい方がいると長引き、1年以上かかるケースや、最悪の場合、境界確定できないケースもあります。測量には時間がかかると考え、できるだけ早く売却の決意を固め行動に移すようにしましょう。

このコラムの執筆者

株式会社キューブ代表(宅地建物取引主任士・建築士)

杉山旬哉

実家が建設会社であったため、不動産業に興味があり大学在学中に「宅地建物取引主任者(現在の宅地建物取引主任士)」を取得する。
大学卒業後、新卒で埼玉県の不動産業者に約10年勤務。お客様が求める物件よりも会社の利益を優先するような不動産業界の旧態依然とした考え方ではいつか立ちいかなくなるだろうと思い、仕事に迷いが生じはじめる。
お客様に心から喜んでいただける物件を紹介するには、物件の調査・書類作成・税務相談・間取プランの作成等の知識が必要であると痛感し「建築士」を取得する。
お客様に豊かな生活と喜びを与えるためには営業力だけでなく物件の調査や書類作成能力が必要だと強く感じるようになり、銀行系不動産業者の三菱信不動産販売株式会社(現在の三菱UFJ不動産販売株式会社)へ転職し約10年勤務。成績優秀者として数多く表彰されるが、大手故の融通が利かない部分や、仕事に直結しない業務の多さに限界を感じ、自身で会社を設立することを決意する。
2016年4月株式会社キューブ、代表取締役に就任。日本の不動産の枠にとどまらず海外不動産の動向やコミュニケーションを学ぶため、カナダのバンクーバーへ留学。日本と海外不動産の売却方法の違いや中古住宅に対する価値観の違いについて深く学ぶ。
2018年に帰国後、リフォーム・リノベーションした中古不動産物件を中心に販売する。
現在は、地主のお客様からの不動産相談や、弁護士・税理士・司法書士等の士族の方からの紹介案件、また、一度お取引したお客様からのご紹介を中心に不動産事業を展開。