一括査定のメリット・デメリット

家を売却する際に、知り合いの不動産業者がいる場合を除き、最も利用することが多いのが一括査定ではないでしょうか?

この一括査定は便利な点が多いですが、気をつけなければならない点もあります。それについてお話したいと思います。

不動産相場がわかる

個人の方でも大手の「SUUMO」「ホームズ」「アットホーム」等でおおよその価格を把握することはできますが、不動産は個別要因に左右されるため、価格が大きく変動することがあります。(土地の場合は、間口の広さ、間口と奥行き比率、高低差等により、分割のし易さ、間取の入れやすさ、地盤工事に要する費用等に影響があります。)このような細かい部分は不動産を扱うプロのアドバイスがなければ、個人の方の判断だけでは見誤ることがありますので、業者が査定した査定書をもとに相場を把握することが必要です。

不動産会社選びに繋げることができる

一括査定のメリットとして、良い不動産会社選びに役立つことが挙げられます。

査定価格を出すにしても何の根拠もなく価格を出しているような不動産会社は、あまり信用できません。大手が導入しているシステムは、近隣の販売事例や成約事例を選択すると自動的に査定書ができあがるようになっており自由に価格調整が可能です。

不動産会社からの連絡時に「こういう根拠でこの価格を出しました。より厳密に価値を算出するために訪問査定させて下さい」と根拠を持って丁寧に査定してくれる不動産会社であれば、信頼がおけます。

査定の根拠や営業のお客様対応などから、誠意のある売却活動を行う不動産会社かどうか、また営業担当者のスキルがあるかどうかを見抜けるようになるメリットがあります。

不動産一括査定のデメリットと対策

不動産の一括査定にはメリットがたくさんありますが、注意すべき点もあります。

査定額は「仲介の査定額」で「売却価格」ではない

一括査定サイトを通じて見積もりされる査定額は、基本的に「仲介」で売却することを想定した価格です。

仲介とは不動産会社に買主を探してもらうことで、「査定額で不動産会社が買ってくれる=すぐにその価格で売却できる」というわけではありません。

売り出した物件の購入希望者が現れたら内見対応を行い、購入の意思が固まれば価格交渉を経て【売買契約】➡【住宅ローンの審査】➡【決済(引き渡し)】と言う流れで売却に至るのが一般的です。

不動産会社が直接購入する「買取」という売却方法もありますが、買取の場合は不動産会社が負うリスクと利益分を見込んで価格が提示されるため、仲介の価格よりも安くなってしまうのが一般的です。

買取の相場は仲介の7〜8割程度と言われていますが、人気の無い物件では更に安くなることもあります。

複数ある査定額でどれが正しいの?

不動産の一括査定は、複数の不動産会社に査定額を一度にもらうことができるのが大きなポイントです。

しかし、不動産の査定額の幅が広ければ、実際に自分の不動産がどの程度で売れるのか、なかなか把握することが難しくなってしまいます。

市場での適正価格が5,000万円なのに4,000万円の査定額を参考に売ってしまえば、1,000万円を損することになります。

逆に、適正価格が5,000万円なのに6,000万円の査定が出たとしても、市場価格とかけ離れているのでなかなか売れないでしょう。

不動産一括査定の注意点

不動産の売却活動に慣れている人は多くないので、一括査定サイトを使って媒介契約を結ぶ不動産会社を選ぶときは、以下のような点に注意してください。

高い査定額を出す不動産会社の言うことを鵜呑みにしない

高い査定価格を出す会社が、必ずしも売却に秀でた不動産会社であるとは限りません。

不動産の売却活動では不動産会社と媒介契約を結ぶことになります。

契約の形態は3種類あります。

  • 一般媒介契約:複数の不動産会社に売却を依頼することが可能。
  • 専任媒介契約:一社のみに売却活動を依頼します。自分で売却先を探すことも可能。
  • 専属専任媒介契約:一社のみに売却活動を依頼します。また、自分で売却先を探すことができません。

このように専任媒介契約及び専属専任媒介契約では、不動産会社のうち一社だけが売却活動に携われるという法律的な規制があります。

不動産会社にとって他社に仲介手数料が流れる心配がなく、売主様から確実に仲介手数料を収受できる大変有利な契約なのです。

もちろん、専任媒介契約を結べば不動産会社が総力を挙げて売却活動に力を入れてくれることが期待できるので、売主様のメリットがないわけではありません。

ただし、他社を排除し、専任媒介契約を取得することだけを目的として査定価格を高めに伝える不動産会社があるのが悲しい現実です。

高く売る能力がない不動産会社の場合、高く買ってくれる顧客を見つけることができず、数ヶ月後に「売れないので値下げして売るしかありません」などと誰でもできるような提案をしてくるのです。

無理に高い査定価格を提示してくる不動産会社よりも、「我々はこういう理由で、この値段で売ることは可能です」など、しっかりと根拠を示す不動産会社を選ぶことが、家を適正価格で早く売るためのポイントになります。

まとめ

不動産の一括査定サイトは、簡単に自分の不動産の査定を知ることができるので大変便利です。

ただし、訪問査定が実施されなければ査定の精度はやや低くなり、しかも多数の不動産会社から営業の電話がかかってくるなど、デメリットが存在しないわけではありません。

不動産の売却においては、一括査定サイトを中心に良い不動産会社とスキルの高い営業担当者を見つけていくことが売却を成功させるためのポイントです。

まずは一括査定サイトを利用し、多くの不動産会社の意見を聞いた上で自分の不動産をしっかりと売ってくれる営業担当者を探しましょう。

このコラムの執筆者

株式会社キューブ代表(宅地建物取引主任士・建築士)

杉山旬哉

実家が建設会社であったため、不動産業に興味があり大学在学中に「宅地建物取引主任者(現在の宅地建物取引主任士)」を取得する。
大学卒業後、新卒で埼玉県の不動産業者に約10年勤務。お客様が求める物件よりも会社の利益を優先するような不動産業界の旧態依然とした考え方ではいつか立ちいかなくなるだろうと思い、仕事に迷いが生じはじめる。
お客様に心から喜んでいただける物件を紹介するには、物件の調査・書類作成・税務相談・間取プランの作成等の知識が必要であると痛感し「建築士」を取得する。
お客様に豊かな生活と喜びを与えるためには営業力だけでなく物件の調査や書類作成能力が必要だと強く感じるようになり、銀行系不動産業者の三菱信不動産販売株式会社(現在の三菱UFJ不動産販売株式会社)へ転職し約10年勤務。成績優秀者として数多く表彰されるが、大手故の融通が利かない部分や、仕事に直結しない業務の多さに限界を感じ、自身で会社を設立することを決意する。
2016年4月株式会社キューブ、代表取締役に就任。日本の不動産の枠にとどまらず海外不動産の動向やコミュニケーションを学ぶため、カナダのバンクーバーへ留学。日本と海外不動産の売却方法の違いや中古住宅に対する価値観の違いについて深く学ぶ。
2018年に帰国後、リフォーム・リノベーションした中古不動産物件を中心に販売する。
現在は、地主のお客様からの不動産相談や、弁護士・税理士・司法書士等の士族の方からの紹介案件、また、一度お取引したお客様からのご紹介を中心に不動産事業を展開。