相続不動産の3つの遺産分割方法

  • 2021年02月10日
  • 最終更新日: 2021年03月06日

各相続人で共有不動産にする

 相続においては法定相続が原則で遺産分割はあくまでも例外です。つまり、遺産分割することなく法定相続分で持分を分けあえば良いのです。たとえば、被相続人が父で母と子供二人、家の名義が父親単有名義だった場合、父が亡くなれば、母が4分の2、子供二人は各4分の1の法定相続分になるので、単純にこの持分で登記すれば良いのです。

◆デメリット
この方法では共有になるため権利関係が複雑になります。たとえば、売却する場合、その共有者全員の同意が必要となります(持分のみの売買の場合は単独で可能)。また、この共有状態で共有者の誰かが亡くなった場合には、その亡くなった方の相続人が共有持分を相続することとなります。こうなると直系卑属がいる限り連鎖的に共有者が増え、更に代を重ねる毎に血縁関係が遠くなり、関係も疎遠になっていくことになりますので、不動産を処分しようと考えたときに処分をすることができなくなってしまいます。

 

誰かが不動産を相続して、他の相続人へ金銭精算する

 相続した不動産に相続人の誰かが住んでいる際に効果的な方法です。一般的に相続人は高齢になるケースが多く、いま住んでいる家から出たくないと考えるものです。住み続けるということは他の相続人にも納得してもらわなければなりませんので金銭で精算するという考え方です。この方法を使えば、いま相続不動産に住んでいる相続人は出ていく必要はありませんし、他の相続人も金銭で精算を受けることで遺産分割をうまく進めることができます。

◆デメリット
この方法では、不動産を相続した相続人が他の相続人に対し、それぞれの法定相続分に応じた金銭を支払わなければなりません。つまり、その金銭を用意することができるかがカギになってきます。また、金銭を用意することができたとしても、その相続不動産をどのように評価すれば良いのかが問題になります。実勢価格、公示価格、路線価、固定資産税評価額のどれを取り入れるかは利害関係が生じるため調整が困難となります。不動産鑑定士に鑑定評価を出してもらう方法もありますが、相続人全員が納得する評価方法を取り入れるのは至難の業です。

不動産を売却してお金で分け合う(換価分割)

 最も公正かつ適正な方法です。この方法は相続人の誰かが売却を拒まない限り行うことができるのでこの方法が一番よく使われています。売却して相続持分で分け合うことができれば、どの相続人からも文句がでてくることはありませんし、お金で分け合うのが最もスマートな方法です。また、売却してしまえば、固定資産税等の維持管理費用は必要なくなりますので、相続人の金銭面の負担もなくなります。

◆デメリット
相続人の誰かひとりでも反対すると売却することができないことです。この方法は相続人全員の売却意思の合意が必要となりますので協力しあって売却を進めていなかければなりません。また、売却するためには一度相続人へ登記名義を移すことが必要となりますが、この登記名義を誰にするのかが問題となります。一般的には売却活動を行う代表相続人ひとりが登記名義人になるか、法定相続分の登記を行って相続人全員で売却活動を行うことになります。

どの方法を採用するかは状況に応じて考えましょう

 どの方法にすればいいのかは状況に応じて考えなければなりませんが、おおよその選択方法はあります。まず、法定相続分どおりに共有状態にする方法ですが、遺産分割問題の先延ばしにしかなりませんので除外しましょう。
次に相続人全員で売却意思の合意があるかで判断します。仮に誰か一人でも売却を拒んだら手続きは進められなくなってしまいますのでまずは全員の意思確認をします。もし、売却することができないとなれば、あとは金銭での精算方法ですすめていくこととなります。また、思い入れが強い不動産であるならば相続して管理していくのも1つの選択です。
このように、ある程度は考え方の順番がありますので、まずはご自身の相続ではどの方法が一番適しているのかを検討して進めると良いでしょう。

このコラムの執筆者

株式会社キューブ代表(宅地建物取引主任士・建築士)

杉山旬哉

実家が建設会社であったため、不動産業に興味があり大学在学中に「宅地建物取引主任者(現在の宅地建物取引主任士)」を取得する。
大学卒業後、新卒で埼玉県の不動産業者に約10年勤務。お客様が求める物件よりも会社の利益を優先するような不動産業界の旧態依然とした考え方ではいつか立ちいかなくなるだろうと思い、仕事に迷いが生じはじめる。
お客様に心から喜んでいただける物件を紹介するには、物件の調査・書類作成・税務相談・間取プランの作成等の知識が必要であると痛感し「建築士」を取得する。
お客様に豊かな生活と喜びを与えるためには営業力だけでなく物件の調査や書類作成能力が必要だと強く感じるようになり、銀行系不動産業者の三菱信不動産販売株式会社(現在の三菱UFJ不動産販売株式会社)へ転職し約10年勤務。成績優秀者として数多く表彰されるが、大手故の融通が利かない部分や、仕事に直結しない業務の多さに限界を感じ、自身で会社を設立することを決意する。
2016年4月株式会社キューブ、代表取締役に就任。日本の不動産の枠にとどまらず海外不動産の動向やコミュニケーションを学ぶため、カナダのバンクーバーへ留学。日本と海外不動産の売却方法の違いや中古住宅に対する価値観の違いについて深く学ぶ。
2018年に帰国後、リフォーム・リノベーションした中古不動産物件を中心に販売する。
現在は、地主のお客様からの不動産相談や、弁護士・税理士・司法書士等の士族の方からの紹介案件、また、一度お取引したお客様からのご紹介を中心に不動産事業を展開。